龍潭譚(りゅうたんだん)・その1~躑躅か丘(つつじかおか~)~

【鏡花怪異譚】明治29年発表。

龍潭譚その1・躑躅ヶ丘

少年・千里は優しい姉の言いつけを肯(き)かずに、こっそりと家を出て遊びに行く。

燃え盛るように赤い躑躅の繁みへと足を踏み入れると、五色にきらめく美しい「毒虫」が千里の顔をかすめる。

毒虫退治に夢中になり躑躅の迷路を駆け回っているうちに、千里の視界は赤い躑躅ばかりに塞がれ、自分がどこから来たのか、どこへ行けばよいのかわからなくなってしまう―――。