※眉かくしの霊・その3の続きエピソードです。
【鏡花怪異譚】大正13年発表。
木曽奈良井の旅籠に投宿した境賛吉(さかいさんきち)に、宿の料理人伊作は土地の因縁の物語を話して聞かせる。
それは一年前の冬に起こった間男(まおとこ)事件のこと。
土地の鼻つまみ者で代官婆(だいかんばば)と呼ばれる老婆と、けなげに尽くす若い嫁のもとに、老婆の息子の旧知の仲だという画師(えかき)が訪れた。
嫁と画師の不義姦通を疑い、両人に天誅を下すと老婆は息巻く。
逃げるように姿を消した画師と入れ替わるように木曽奈良井へと訪れた芸者・お艶(つや)。
実はお艶は、両人の不名誉を晴らそうとやってきた、画師の妾(めかけ)であった。