【鏡花怪異譚】明治29年発表。
龍潭譚その2・鎮守の社(やしろ)
躑躅の迷路に囚われてしまった少年・千里。
見渡す限りに咲き乱れる赤躑躅から逃れるため、大波のように起伏する坂道を走りまわるが、出口が見つからない。 日が暮れかかり肌寒くなるにつれ、心細さと姉恋しさは増すばかり。
泣きながら姉を呼ぶと、千里の声に応えるがごとく、遥か遠くに滝の音が聞こえた。
さらにその音の中に、隠れあそびをする子供の「もういいよ」の声。 声のする方を辿り、躑躅の迷路を抜けると、そこは鳥居に囲まれた社(やしろ)であったーーー