【鏡花怪異譚】明治29年発表
龍潭譚その4・あふ魔が時のつづきエピソード。
黄昏時に現れる魔物から逃れるように、社の片隅に逃げ込んだ少年•千里。
そこへ、千里を探す姉と爺やの会話が聞こえて来るのだった。
出掛けにいつも行う魔除けのまじないを、今日に限ってしてやらなかった事を悔やむ姉。
姉への恋しさに耐えかねて表へ飛び出した千里。
千里を見つけた姉はすぐに手を差し伸べるが、その顔を見た途端「人違い」と告げて去ってしまう。
千里は水面に映る自分の顔が別人の如き相貌に変わっている事に気づき、慄くのだった。
絶望感に苛まれながら姉の背中を追いかけて無我夢中で走り回るうちに、木々に囲まれた森の中の大沼にたどり着いた千里は、そのまま倒れ込んで気を失ってしまうーー