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【明治28年発表】
黒猫・その15のつづきエピソード。
真夜中の月影に紛れた男女の影がふたつ。
それは、盲人の富の市(とみのいち)と、歪んだ恋路の手引きをする髪結いのお島(しま)であった。
お島は上杉家の垣根を差し覗きながらお小夜の気配を探っている。
まさにその丑三つ(深夜2時ごろ)時に静かに寝返りをするお小夜(さよ)の影があった。
お島に聞いた、富の市と縁を切るまじないを実行に移すために起きだしたのである。
お小夜は隣に眠る弟の秀松や隣室の家族に気づかれないように部屋を出で、するりと扉を抜けて外へと出ていくのだった。
自身が悪魔の生贄になろうとしていることも知らずに―――
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