エッセイ

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道中一枚繪 その一・後編

弥次郎兵衛と喜多八は正月五日に 静岡県の久能山へ登り、 徳川将軍家ゆかりの東照宮へと参詣する。 曲がりくねった参道の石段を登り 眼下に広がる絶景に心を潤す二人。
エッセイ

道中一枚繪 その一・前編

年の瀬と正月の情景を描いた小品をひとつ。 東海道中膝栗毛の弥次郎兵衛と喜多八に自身をなぞらえた旅行記。
エッセイ

幼い頃の記憶

明治45年発表。鏡花自身が少年だった頃の忘れえない思い出を綴ったエッセイ。 幼かった鏡花少年は、母との船旅で乗り合いになったひとりの年若い女性と出会う。 色が白く美しいその女性は周囲に馴染もうとせず、どこか寂しげに、ひとり水面や空を見つめているのだった。 女性とのただ一度きりの邂逅は、夢か、現(うつつ)か、それとも前世の光景かーーー。
エッセイ

栃の実(とちのみ)

金沢から北国街道を経由して東京へと向かう旅路での出来事を綴った、エッセイ的作品。 早朝に宿を出発した鏡花は、武生(たけふ)に着いたところで思案に暮れる。 その年の夏に起きた水害で崖崩れが起こったために、汽車も陸路も不通という知らせを受けていたからである。 ただ一つ、最も山深い難所ではあるが、栃木峠から中の河内(なかのかわち)を通る山越え路は通じているという。 覚悟を決め、険しい峠が重なる山へと一人で入っていくと そこは想像以上の悪路であった。 栃の大木が生い茂る山中の描写は恐ろしくも神秘的。また、峠の茶屋の娘が山姫になぞらえられるなど、深山の幻想的な空気を漂わせた短編です。 厳しい自然と対をなすように土地の人々との温かい交流が描かれ、 タイトルにもなっている栃の実が印象的に用いられています。