龍潭譚(りゅうたんだん)・その3〜かくれあそび〜

【鏡花怪異譚】

明治29年発表。

夕暮れ時にたどり着いた神社の境内では、千里(ちさと)と同じ年ごろの子供たちがかくれあそびをして走り回っている。

「かたい」と呼ばれるこの集落の子供たちは、普段は千里たちと交流することはないが、人恋しい寂しさと安堵の気持ちから、千里は請われるままにかくれあそびの輪に加わる。

隠れる者を探す鬼役となった千里が顔を覆って待っていると、いつしか人の気配は消え、滝の音と木々を揺らす風の音がするばかり。

堂の扉も閉じられて、黄昏の境内に千里はひとり取り残されてしまう。

途方に暮れていると、いつの間にか千里の傍には美しい女性が微笑んで立っているのだったーーー。

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