眉かくしの霊・その1(まゆかくし の れい)

【鏡花怪異譚】

大正13年発表

信州は木曽街道、奈良井宿の旅館に投宿した境賛吉(さかいさんきち)は、宿の夕餉で出された鶫料理にまつわる不思議な話を、料理人の伊作に話して聞かせる。

芸妓の口元から鶫の生き血が滴るくだりに、伊作は我を忘れた様子を見せるのであったーー。

「弥次喜多」膝栗毛の引用から始まる軽妙な雰囲気が、いつしか薄暗い不気味さにすり替わっていく筆が見事。

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