明治期発表作品

幻想怪異譚

龍潭譚・その5〜大沼(おおぬま)~

龍潭譚その4・あふ魔が時のつづきエピソード。 黄昏時に現れる魔物から逃れるように、社の片隅に逃げ込んだ少年•千里。 そこへ、千里を探す姉と爺やの会話が聞こえて来るのだった。出掛けにいつも行う魔除けのまじないを、今日に限ってしてやらなかった事を悔やむ姉。 姉への恋しさに耐えかねて表へ飛び出した千里。千里を見つけた姉はすぐに手を差し伸べるが、その顔を見た途端「人違い」と告げて去ってしまう。千里は水面に映る自分の顔が別人の如き相貌に変わっている事に気づき、慄くのだった。 絶望感に苛まれながら姉の背中を追いかけて無我夢中で走り回るうちに、木々に囲まれた森の中の大沼にたどり着いた千里は、そのまま倒れ込んで気を失ってしまうーー
幻想怪異譚

龍潭譚・その4~あふ魔が時(おうまがとき)~

【鏡花怪異譚】明治29年発表。 龍潭譚その3・かくれあそびのつづきエピソード。 夕闇の古社にあらわれた美しく謎めいた女性。 目くばせされるままに暗がりの片隅へと歩み入ったところで、千里は「黄昏時の暗い片隅には魔物が棲むゆえに近寄ってはならない」という姉の教えを思い出して背筋を凍らせる。 左手にある坂道の底からは闇のような瘴気が立ち上るよう。恐ろしさに身を震わせながら狭い社の中に逃げ込むと、冥界から遣わされた獣が社を横切る気配がする。 魔物から守るために女性が千里を暗がりへと導いたか、と思いを巡らせているところへ聞こえてきたのは、千里を探す使用人たちの声。人か魔か判じることが出来ないままやり過ごしていると、悲しげに千里の名前を呼ぶ、恋しい姉の声が―――
幻想怪異譚

龍潭譚(りゅうたんだん)・その3〜かくれあそび〜

龍潭譚その2・鎮守の社(やしろ)のつづき。夕暮れ時にたどり着いた神社の境内では、千里(ちさと)と同じ年頃の子供たちがかくれあそびをしている。「かたい」と呼ばれるこの集落の子供たちと千里とは普段は交流することはない。しかし人恋しさと安堵から、千里は請われるままにかくれあそびの輪に加わる。隠れる者を探す鬼役となった千里が顔を覆って待っていると、いつしか人の気配は消え、滝の音と木々を揺らす風の音がするばかり。黄昏の境内に千里はひとり取り残されてしまう。途方に暮れていると、いつの間にか傍らに美しい女性が微笑んで立っているのだった―――
幻想怪異譚

龍潭譚(りゅうたんだん)・その2〜鎮守の社(ちんじゅのやしろ)〜

龍潭譚・その1~躑躅(つつじ)か丘~のつづき。躑躅の迷路に囚われてしまった少年・千里。見渡す限りに咲き乱れる赤躑躅から逃れるため、大波のように起伏する坂道を走り回るが、出口が見つからない―――。
幻想怪異譚

龍潭譚(りゅうたんだん)・その1~躑躅か丘(つつじかおか~)~

明治29年発表。少年・千里は優しい姉の言いつけを肯(き)かずに、こっそりと家を出て遊びに行く。燃え盛るように赤い躑躅の繁みへと足を踏み入れると、五色にきらめく美しい「毒虫」が千里の顔をかすめる。毒虫退治に夢中になり躑躅の迷路を駆け回っているうちに、千里の視界は赤い躑躅ばかりに塞がれて、自分がどこから来たのか、どこへ行けばよいのか道に迷ってしまう―――。
幻想怪異譚

妙の宮(たえ の みや)

明治28年発表。「妙の宮」と呼ばれる山中の社に夜遅く肝試しに訪れた、美しい少年士官。空まで続くような石段を登る半ばで、懐の金時計が鎖だけ残して消えていることに気づく。
幻想怪異譚

処方秘箋(しょほうひせん)

明治34年発表。幼い頃の「私」が体験した、不思議にて恐ろしいはなし。親しくしている近所の娘、お辻の家に泊まりに行く途中の「私」は、怪しげな婦人が営む薬屋の前で躓いて転んでしまう。
幻想怪異譚

紅提灯・その3(べにちょうちん)

紅提灯後編。魔の世界に翻弄され、心乱れる若者・殿井の前に涼やかに現れた美女。そこで明かされる恐ろしい出来事のからくりとは——。
幻想怪異譚

紅提灯・その2(べにちょうちん)

真夜中の稲荷堂へと迷い込んだ若い郵便局員・殿井。御堂の闇から浮かび上がったのは、醜悪な容貌の不気味な老人で———…。
幻想怪異譚

紅提灯・その1(べにちょうちん)

明治45年発表。四谷見附から番町へと入る通りに鎮座する、稲荷堂。夜半過ぎの境内に迷い込んだ若い郵便局員が遭遇する怪異の物語―――。