幻想怪異譚

黒猫・その2

黒猫・その1の続きエピソード。 武家の娘・お小夜(さよ)のもとを訪ねた盲人の富の市は、なかなか帰る気配がない。 やがて辺りが暗くなり、お小夜たちは鮎釣りに出かけたまま戻らない弟・秀松のことが気にかかる。 お小夜は暮色の戸外に立ち出で、門の前を横切る小川の橋のたもとに佇みながら、秀松の帰りを待つのだった。(タイトルクリックでつづきをよむ)
幻想怪異譚

黒猫・その1

武家の娘お小夜(さよ)は雄の黒猫を飼っている。 その目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりにお小夜の母は、(物語「南総里見八犬伝」の中で犬と結婚した)伏姫を重ねてお小夜を揶揄する。 ある日お小夜の家へ盲人の富の市が訪ねてくる(タイトルクリックでつづきをよむ)
エッセイ

幼い頃の記憶

明治45年発表。鏡花自身が少年だった頃の忘れえない思い出を綴ったエッセイ。 幼かった鏡花少年は、母との船旅で乗り合いになったひとりの年若い女性と出会う。 色が白く美しいその女性は周囲に馴染もうとせず、どこか寂しげに、ひとり水面や空を見つめているのだった。 女性とのただ一度きりの邂逅は、夢か、現(うつつ)か、それとも前世の光景かーーー。
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龍潭譚【全編】

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未分類

龍潭譚・その10~千呪陀羅尼(せんじゅだらに)~

【鏡花怪異譚】明治29年発表。龍潭譚その9・ふるさと のつづきエピソード。魔処・九つ谺(ここのつこだま)から里へ帰った少年・千里(ちさと)。自分の最大の理解者であった姉のことまでも信ずることができずにいる。すべての物事に敵意と警戒心をむき出しにしながら過ごすうちに、心身共に衰弱してしまう。ある日千里は担がれて遥か石段を登り、大きな門構えの寺の本堂に据えられる。本堂では数人の僧侶が声を揃えて経文を唱えだした。耳障りなその声に耐えかねて千里は僧侶の一人の頭を叩こうとした。その途端、青い一条の光が差し込んで千里の目をかすめ、胸を打つ。千里がひるむと、若い僧侶がいざり出て本堂にある金襴のとばりを開く。と、そこには、神々しい姿の仏像が優しく千里に微笑むのだった――
未分類

龍潭譚・その9~ふるさと~

【鏡花怪異譚】明治29年発表。龍潭譚その8・渡し船(わたしぶね)のつづきエピソード。老人に伴われて沼を渡り、少年・千里(ちさと)は故郷へと帰ってくる。家に戻った千里を待ち受けていたのは、嘗ては親しかった友人や親類縁者たちの奇異の目であった。再会を焦がれた姉ですら、千里のことを神隠しに遭って気がふれてしまったものと思い込んでいる。毎日周囲からののしられ、あざけられているうちに、千里自身も疑心暗鬼に陥ってしまう。あの九つ谺(ここのつこだま)で逢った美女の許に逃げ出したいと狂おしいまでに願うものの、思い空しく、千里は暗室に閉じ込められてしまうのだった―――
幻想怪異譚

龍潭譚・その8〜渡船(わたしぶね)

【鏡花怪異譚】明治29年発表。龍潭譚その7・九つ谺(ここのつこだま)のつづきエピソード。謎めいた美女の添い寝を受けながら少年・千里(ちさと)は夢うつつに美女の寝姿に目を凝らす。うす暗がりの有明に浮かび上がる、仰向けに横たわる整った顔だち。その守り刀を持った白い手を眺めているうちに、千里は自分の母が亡くなった日の姿と美女を重ねてしまう。死の影を払おうとして守り刀に手をかけると、刀の切羽が緩んで血汐がさっとほとばしった。千里は慌てて流れにじむ血を両手で抑えようとするが、血汐はとうとうと流れ、美女の衣を赤く染めていく。美女は変わらず静かに横たわっている。はっと気づいて見定めると、衣を染めたと見えたのはすずしの絹の着物に透けて映った、紅の襦袢の色であった。日が高く上ったころに目覚めた千里は、昨晩あった老人に背負われて山を降りる。美女はその後ろをついて歩く。やがて大沼のほとりへとたどり着き、千里は老人に伴われて小舟に乗る。一緒にと駄々をこねる千里だったが、美女は気分が悪くなるから、と岸で見送るのだった。舟は水を切るごとに目くるめくようにくるくると廻る。岸で見送る美女が右に見え左に見え、千里は前後左右の感覚を失ってしまう―――
幻想怪異譚

龍潭譚・その7〜九つ谺(こだま)〜

【鏡花怪異譚】明治29年発表。 龍潭その6・五位鷺(ごいさぎ)のつづきエピソード。 水浴びから上がった美女は、千里に添い寝しながらいくつかの物語を語る。 やがて二人が居るこの場所が「九つ谺(こだま)」と呼ばれることを千里に伝えた美女は、自らの乳房を千里に含ませて眠りへと誘うのだった。 まどろんでいるところへ天井上、屋の棟あたりから凄まじい物音。美女が毅然と音の主を諌めると、音は次第に静まっていった。 それでも恐ろしさに震える千里に美女は、蒔絵箱から守刀を取り出して見せるのだったーーー。
幻想怪異譚

龍潭譚・その6〜五位鷺(ごいさぎ)〜

龍潭譚その5・大沼(おおぬま)のつづきエピソード。森の中で気を失ってしまった少年・千里(ちさと)。涼しげな香りに目を覚ますと、柔らかな蒲団の上に身体を横たえているのだった。頭をあげて見渡すと、庭の先には、青々と濡れたように草の生い茂る山懐が広がっている。滑らかに苔むした巌角(いわかど)に浮かび上がる、一挺の裸ろうそくの火影。筧(かけい)から湧き上がるように零れ落ちる水をたらいに受け、一糸まとわぬ美女が向こう向きに水浴をしている。山から吹き下ろす風にちらちらと揺れる火影に映ろう雪の膚(はだえ)。千里の気配に気づいて立ち上がろうとした美女のふくらはぎをかすめて飛ぶ、真っ白い五位鷺。悠然と千里のもとに歩み来た美女は、千里が夕暮れ時に追いかけて殺したのは毒虫だったこと、その毒に触れたせいで顔が変わってしまい、迎えに来た姉が千里に気づかずに去ってしまったことを告げるのだった――――。
エッセイ

栃の実(とちのみ)

金沢から北国街道を経由して東京へと向かう旅路での出来事を綴った、エッセイ的作品。 早朝に宿を出発した鏡花は、武生(たけふ)に着いたところで思案に暮れる。 その年の夏に起きた水害で崖崩れが起こったために、汽車も陸路も不通という知らせを受けていたからである。 ただ一つ、最も山深い難所ではあるが、栃木峠から中の河内(なかのかわち)を通る山越え路は通じているという。 覚悟を決め、険しい峠が重なる山へと一人で入っていくと そこは想像以上の悪路であった。 栃の大木が生い茂る山中の描写は恐ろしくも神秘的。また、峠の茶屋の娘が山姫になぞらえられるなど、深山の幻想的な空気を漂わせた短編です。 厳しい自然と対をなすように土地の人々との温かい交流が描かれ、 タイトルにもなっている栃の実が印象的に用いられています。