幻想怪異譚

処方秘箋(しょほうひせん)

明治34年発表。 幼い頃の「私」が体験した、不思議にて恐ろしいはなし。親しくしている近所の娘、お辻の家に泊まりに行く途中の「私」は、怪しげな婦人が営む薬屋の前で躓いて転んでしまう。
幻想怪異譚

紅提灯・その3(べにちょうちん)

紅提灯後編。 魔の世界に翻弄され、心乱れる若者・殿井の前に涼やかに現れた美女。 そこで明かされる恐ろしい出来事のからくりとは——。
幻想怪異譚

紅提灯・その2(べにちょうちん)

真夜中の稲荷堂へと迷い込んだ若い郵便局員・殿井。 御堂の闇から浮かび上がったのは、醜悪な容貌の不気味な老人で———…。
大正期発表作品

眉かくしの霊・その5(まゆ かくし の れい)

眉かくしの霊・その4のつづき。愛人である画師の汚名を雪ぐために木曽奈良井宿を訪れた芸者のお艶。料理人の伊作は、旅籠の提灯で守護するように真夜中の仇討ち道中を先導するのだった。だが途中で提灯の灯が消えてしまい―――。
大正期発表作品

眉かくしの霊・その4(まゆ かくし の れい)

眉かくしの霊・その3のつづき。 木曽奈良井の旅籠に投宿した境賛吉に、宿の料理人・伊作は土地の因縁の物語を話して聞かせる。 それは、一年前の冬に起こった間男(まおとこ)事件のことであった――。
大正期発表作品

眉かくしの霊・その3(まゆかくし の れい)

眉かくしの霊・その2のつづき。 投宿した旅籠の湯殿で怖ろしくも不思議な体験をした境賛吉。 自室へと戻ると、ふわりと巴紋の提灯が境の座敷へと入り込む。すると白鷺と見紛うたたずまいの女が、座敷の鏡台に向かい化粧をしているのだった―――。
大正期発表作品

眉かくしの霊・その2(まゆかくし の れい)

眉かくしの霊・その1のつづき。 木曽街道は奈良井宿に逗留することを決めた境賛吉は、宿の母屋から長々と離れた十畳座敷へと通される。座敷そばの洗面所からは、幾たび閉めても止まない水音がこだまするのだった――。
大正期発表作品

眉かくしの霊・その1(まゆかくし の れい)

大正13年発表。信州は木曽街道・奈良井宿の旅籠に投宿した境賛吉(さかいさんきち)。宿の夕餉で出された鶫料理に因み、芸妓と鶫の生き血の不可思議な話を料理人に語り始める―――。
大正期発表作品

高桟敷・その2(たかさじき)

高桟敷・その1のつづき。 宙に吊られた如くにそびえる高桟敷の御殿。そこにはこの世のものとは思えぬ美しい女と、美女に使える女の童が住まっていた―――。
大正期発表作品

高桟敷・その1(たかさじき)

大正13年発表。 崖に囲まれた谷町窪地を散策していた青年教師・木崎時松は、墓地の崖下に続く汚い長屋路地に迷い込んでしまう。住人の女房たちに教えられるまま突き当たりの黒板塀に囲まれた寺の抜け道を進むと——現れたのは崖の頂辺から宙に吊られた屋敷。回り縁の欄干には、しなだれかかる妖艶な美女が——。