人魚の祠【後編】(にんぎょ の ほこら)

【鏡花怪異譚】

大正5年発表。

桃源郷のごとく幻想的な沼辺で、工学士が目にした風景。

靄に包まれた中に現れたのは釣りをする三人の美女の姿だった。

垂れた釣り糸にかかったのは、人形のように白く小さな少女。

同じ沼辺のほとりにある祠(ほこら)には、寝乱れた天女のような女と、

その身体にまとわりつく毛むくじゃらの三俵法師(さんだらぼうし)。

三俵法師と見紛うたのは、棕櫚(しゅろ)の毛を纏った男に飛びつく幾千の蚤の集団であった―――。

めまいを誘うような異形の思い出と、現代に会話する「工学士」と「私」。

二つの時間軸をむせ返るような甘い乳香の花の香りの描写が繋ぐ。

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